大阪の南部、泉州地域にある海沿いのコンパクトシティ、泉大津市。だんじり祭りといった旧来からの祭礼や、湾岸エリアにある泉大津フェニックスで開催される大型フェスイベントなどでの認知に加え、主に子育て世代が集まる施設や取り組みが充実しつつあることで話題になることが増えてきました。
そんな噂を聞きつけ、泉大津市の今を知るべく南海電鉄地域発見クリエイターズ課「You」が泉大津市役所に訪問。泉大津市の魅力を発掘すべく、市の職員の皆さんにお話を伺っていきます。
市長公室成長戦略課 宮下さんに泉大津市の魅力についてお話を伺いました。
泉大津市は人口約7万人、面積は約14㎢でコンパクトで住みやすいまちです。中心駅でもある南海電鉄の泉大津駅は急行が停まるので、なんばへも関西空港へも約20分。和歌山へも近いです。
高速道路の結節点にもなっていますので車での利便性も高く、神戸、奈良、和歌山へはそれぞれ1時間以内で行くことができます。
泉大津港から北九州へフェリーも出ており、関空も近いので国内から海外まで、あらゆる場所へのアクセスが非常に快適です。
令和6年12月に新しい泉大津急性期メディカルセンターが完成し、急性期の医療を支援しています。300床と非常に大きな病院で、何かあっても安心できる環境づくりを目指しています。旧市立病院も、小児医療と周産期に特化した、全室個室対応の医療センターとして開院したところで、泉大津市で安心してこどもを産める環境を整備しました。
他には市立図書館「シープラ」が駅前商業施設の中にオープンし、開館3年を待たずに来館者数100万人を突破しました。セミナースペースを設けて年間400本程のイベントを開催したり、こどもが声出しできるスペースを設けたりしています。変わったところでいうと、民間企業さんのご協力により植物を借りられるようにしていただき、読書のときに側に置いて個々に癒し空間を作っていただくというような取り組みもございます。
令和5年、市民会館の跡地にシーパスパークがオープンしました。市内に緑が少ないという声がありましたので、緑を感じられるスペース作りを目的として整備された公園です。公園エリアと民間活用エリアに分けて、「来たら健康になれる公園」をコンセプトに作られています。
裸足で遊べる芝生広場があったり、人工芝のすべり台や泥んこになれる場所があったり、こどもたちの想像力をかき立てて遊べるところがあったりします。公園の中央管理棟(パークセンター)にはトイレや更衣室、授乳室のほか多目的ホールがあり、そこで健康管理プログラムを実施し、健康に特化した取り組みなども行っています。また、園内に植栽された木々が成長すれば、20〜30年後には街中に森が現れるようなコンセプトになっています。
泉大津市では持続可能な社会にむけて「健康」「環境」「教育」の3分野を官民一体で研究。その成果を先進事例として全国へ発信していくアビリティタウン構想に取り組んでおり、その中の健康へのアプローチとして令和5年に健康づくり推進条例を制定しました。健康増進に取り組むことで市民の免疫力をより良い状態に高め、医療費の削減を目指しています。こどもたちへの食育や運動能力の向上、高齢の方には健康状態の見える化をし、自分にあった健康対策で健康寿命を延ばしていく。それを市内で完結できるようなまちづくりを目指しています。シーパスパークやあしゆびプロジェクト、マタニティ応援プロジェクトなどもアビリティタウン構想の一環になります。
市長公室秘書広報課 下江さんに泉大津市での生活についてお話を伺いました。
自転車で15分もあれば縦断できるような広さですが、その中にスーパーやドラッグストア、コンビニもたくさんあります。坂の少ない平坦なまちなので通勤通学や買い物などの移動も非常にしやすいです。病院や公園などもふくめて必要なものが生活圏内にギュッと詰まっています。シェアサイクルも導入し、泉大津駅を中心に市内のどこへでも行きやすい環境づくりができています。
実は泉大津市では平成19年から転出超過が続いていました。移住・定住の促進を目的にシティプロモーションを令和5年から本格的にスタートし、泉大津市の面白い取り組みを知ってもらえるよう動いてきたこともあり、令和5年は約20年ぶりに転入超過となりました。ここはしっかりのばしていきたいと考えています。
通勤通学にも便利で2割程の方が大阪市内へ通勤しています。また、大阪市と和歌山市でそれぞれ働かれている夫婦が間を希望して泉大津に暮らされていることもあります。交通の便もよく、市民の方も優しいので、泉大津の生活は本当にしやすいと思います。
泉大津市に住み続けたいという人がアンケートでは86.2%です。住むと便利で住みやすく、面白い取り組みもやっていますので、それらのイメージをより一層伝えていくために「あたらしいがあるらしい泉大津」というブランドメッセージを市民投票で決定しました。これを広げていきたい、挑戦していきたいと考えています。
そうですね、やはり選択肢の多さだと思います。何かに特化しているというよりも、アクセスの良さがあったり、健康や子育てをはじめとした他の自治体にはない取り組みがあったりするところでしょうか。都市部のいいところもありつつ緑もあり、自分にあった生活ができるところが1番のポイントだと思います。
子育て応援課 西澤さんに、泉大津市の子育て環境の特色をお伺いしました。
令和5年4月から、妊婦さんに毎月10kg、「金芽米(きんめまい)」というお米を配っています。玄米の栄養価をたくさん残していること、そして買い物の負担を減らし、無洗米なので洗う作業が不要なため、つわりなどで体調がすぐれないなかでも手軽に炊けて嬉しいというお声をたくさんいただいています。物価高もありますので、少しでも支援になればと考えています。
一般的な4か月健診と1歳半健診の間が空いてしまわないように、7か月のお子様を対象に訪問をしております。核家族化が進み育児に不安を抱える方が多くなっていますので、発達の状況などの不安をお聞きするために助産師や保健師が家庭を訪問し、育児相談を受けています。
その際に5万円分のギフトカード(ポイント交換品)をお渡しして、育児に関わる品(おむつやミルク、離乳食など)の支援をしており、「市から助けられているという実感が感じられてよかったです」といったお声もいただいています。
1歳半と2歳半、3歳半の健診の間に2歳、3歳で歯科健診を実施しています。虫歯など気になる部分での相談にしっかりと対応させていただいています。
泉大津市は学校給食にも力をいれており、小中学校の給食を支える3つの柱があります。
1. ときめき給食
第2、第4木曜日に実施。発酵食品やオーガニック食材(みそなど)を使用したり、小松菜など有機の葉野菜、そのほか地産地消などのテーマを設けた給食を提供したりしています。地産地消の場合はなるべく近郊でとれたもの、泉州たまねぎや松波キャベツなどを使用しています。費用が上がる分は市で負担しています。
こどもたちが喜ぶ食材だけではなく、食育を考えて普段食べないような食材も提供しています。初めて食べる食材もあるようですが、こどもたちは基本的には美味しいと言って食べてくれています。
2. お米の取り組み
有機米や特別栽培米を金芽米加工(栄養価や旨みを多く残した精米)したものを使用しています。実際に食べたこどもたちからは、お米が変わってから美味しくなったよーという声をいただいています。
3. 給食費と充実した給食内容
給食費は平成27年から変えていません。数年前までは費用を抑えるために牛肉が献立に入っていませんでしたが、今はお米とときめき給食にかかる予算を市が負担しているため、保護者様の負担は変わらず充実した内容になってきています。
泉大津市ではお母さん向けへの子育て講座はもちろん、お父さんに向けても開催しています。たくさんの方にご参加いただきたいですが、これまでの予約方法は電話、または直接会場で紙に書くという形だったために、参加できる人が限られていました。そこで昨年度より、24時間いつでも講座の予約ができる「ジモイク」というアプリを導入しました。
これによって日中お仕事で忙しい方も予約がしやすくなり、お母さんだけではなくお父さんの講座参加も増えてきています。予約を受ける市側の手間も軽減し、双方にメリットがあり、市民の皆様にもご好評をいただいています。
このようなシステムはコストが大きいために小さな自治体での導入は難しいのですが、実証実験ということで企業様にご協力をいただいて導入が実現しました。
アビリティタウンを目指す泉大津市では、幼稚園でも足指を意識した健康増進の取り組み「あしゆびプロジェクト」を行っているとのことで、泉大津市立穴師幼稚園にお邪魔してきました。幼稚園には、プロジェクト活動の一つ、運動指導担当の宮原先生がやって来て、こどもたちに教えてくれていました。
穴師幼稚園 山下先生にあしゆびプロジェクトの取り組みの一つ“体育遊び”とはどのようなものか伺いました。
泉大津市では、“あしゆびから健康な体づくり”として「あしゆびプロジェクト」に取り組んでいます。日頃の遊びや生活の中で、足指を意識して、健康な体の土台づくりにつなげられるように、幼稚園(就学前教育・保育施設)では、宮原先生の指導による“体育遊び”を実施しています。
幼稚園のこどもたちを見ていると、立っていてもふらついてしまったり、椅子にじっと座ってると姿勢が傾いてしまうなど、踏ん張る力が弱まっているのを感じます。トイレも洋式が基本になるなかで、運動で足指を強くしていきたいと考え、幼稚園にいる間は体を動かす機会を持てるように工夫しています。体育遊びでは、体幹が弱く、足の指に力を入れることが難しいお子さんが増えているので、足指を鍛える運動を1回あたり大体30〜40分くらい、3,4歳は年間8回、5歳は9回取り組んでいます。
宮原先生による体育遊びは、ごっこ遊びなどの遊びを通じて結果的に足指が鍛えられるようにしているので、こどもたちは足指を鍛えようと意識をせず、楽しんでくれています。遊び方ひとつとっても、こどもたちが飽きない工夫をしてくれています。
ボールや遊具がなくとも、こどもたちは先生のお話をしっかり聞いていますし、とても楽しそうに取り組んでいます。こどもたちは先生が何か楽しいことをしてくれているというのをよくわかっているんです。宮原先生はこどもたち自身が「やりたい!」って思えるようにするのが上手なんです。
体育遊び以外の幼稚園の取り組みでも足指は意識していて、宮原先生に教えていただいた片足バランスをやってみたり、3学年で一緒にリレーをやってみたりすることもあります。また、色々な種類の鬼ごっこを提案することもあり、担任が意識して走る動きと静止する動きを運動に取り入れています。
泉大津市公立園所での体育指導を18年前にスタートしました。この取り組みを考案された現在も一緒に指導に携わる福田先生がおりまして、彼が小学校の体育の指導に関わった際に、こどもたちの運動の得意・不得意が体育の授業をぱっとみただけではっきりとわかる状態だったんです。できない子は苦手意識を持ってしまってて。
話を聞いてみると、私立の幼稚園では外部の人が入ることでこどもの運動をサポートしている一方、公立の幼稚園では対応できていない状況でした。公立でもこどもの運動をサポートしていくために自分たちの力で何かできないかと考えたことが公立園所での体育指導をはじめた最初のきっかけでした。
かれこれ18年くらい取り組みを続けていたのですが、4年程前に泉大津市が「あしゆびプロジェクト」という取り組みをスタートさせ、こどもたちの運動力を高めようという部分で想いが合致して、そのタイミングで「こども体育あそびnet.」として組織化し、官民一体で一緒にやることになりました。
幼児期の体力がどれくらいなのかをデータとして未来に残し検証していくため、年度はじめに体力測定を行って、事前と事後でどれくらいの推移で伸びているかを記録しています。
体力測定では25m走(走力)、立ち幅跳び(瞬発力)、片足バランス(平衡性)の3つを実施します。足指にも大きく関わるため、足裏のデータを測る企業も入ってくださっています。体力測定と足裏のデータにより多角的な観点でこどもたちの能力を見ることで、来年度につなげていくようにしています。
蓄積したデータをどのように分析していくか、そしてそれをもとに体育指導をどのようにアップデートしていくかということも合わせて模索しています。
足指を使うことをこどもに意識させることが重要ですので、「背筋を伸ばしてね」と言えば背筋を伸ばすように「足の指を使ってね」と言葉で意識させています。並行して無意識に行えることも大事なので、鬼ごっこで走ることにより足指の運動を取り入れています。やらされるのではなく楽しく自然にできるようにすることが、こどもたちの体力づくりの素地づくりにつながると考えています。
足指もですが、幼児期の運動の大切さは科学的にも言われているので、「プレゴールデンエイジ」という言葉が幼児期を指すように、その時期の運動の大切さや動機づけを発信していくことで、どんどん伝えていけたらと思っています。
こどもの運動はいま二極化していて、大谷翔平選手はじめ世界で活躍するような選手の体力や能力は上がっている一方で、全く運動していない子も増えています。
小学校に入ると一気に運動への苦手意識を持つようになるので、苦手意識を持ちにくい幼児期に色々やろうよというのが活動の原点にあります。
また、この取り組みにはご家庭での環境も大事なため、親子体操や自由参観のなかに講話の機会をつくり「なぜ幼児期に運動が大事なのか」を伝える啓発活動にも取り組んでいます。
泉大津市の公立幼稚園の保護者の方の自由参観の参加率は非常に高く、例えばえびす認定こども園では120家庭のうち100家庭ほど参加されます。中にはスーツのまま、仕事の合間に参加される方もいて、関心の高さを感じます。
あしゆびプロジェクトに関しては、僕たちのような団体と連携を図りながら官民一体で地域に課題を投げかけていけるというのは地域活性にもつながると思います。前例を聞いたことがない取り組みですし、僕らは貴重な経験をさせていただいていると思います。
そして今後は、幼少期の取り組みとして進めているあしゆびプロジェクトを小学校以降にも繋げていけるよう、市とともに取り組んでいきたいと考えています。
2日にわたり泉大津市をインタビューさせていただきました。印象的だったのは住みやすさに加えて子育てと健康に対する意識の高さでした。まち全体で、官も民も一緒になって子育てを支え、健康を支えていく。市長を中心に市役所の皆さんがベクトルを合わせ、市民も一緒に巻き込んで取り組んでいる様子がお話を伺った皆さんの言葉ひとつひとつから溢れていました。
アクセス抜群のまちで仕事、そして子育てをしながら健康を考えていく。この記事を読んで、そんなイメージと合致したら、ぜひ泉大津市への移住を検討してみてくださいね。
インタビュアー:You
執筆者:ノブ
撮影者:SUBAL
泉南市在住で2人の息子(7歳、2歳)の子育て中です。南海電鉄大好き兄弟と週末に沿線地域を散策。父親目線で子どもと出かけやすい場所や楽しい遊び場などを探し、発信していきます。
泉南市在住で2人の息子(7歳、2歳)の子育て中です。南海電鉄大好き兄弟と週末に沿線地域を散策。父親目線で子どもと出かけやすい場所や楽しい遊び場などを探し、発信していきます。