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ここに住みたい!住み続けたいまちに!スマートシティで生まれ変わる泉北ニュータウンの魅力と、そこにかける想いとは?

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ここに住みたい!住み続けたいまちに!スマートシティで生まれ変わる泉北ニュータウンの魅力と、そこにかける想いとは?
なんかいくらし編集部
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watch 2024.10.2

大阪府堺市南部に位置し、西日本最大規模のニュータウンとして知られる「泉北ニュータウン」。近年、高齢化により全国各地の”かつてのニュータウン”が活気を失うなかで、泉北ニュータウンは子育て世代にとって魅力的な街へと大きな変化を遂げています。
今回は堺市役所泉北ニューデザイン推進室でスマートシティ(※1)担当をされている久保様から、スマートシティ構想にかける想いや、未来を見据えた泉北の魅力についてお話を伺いました。

※1 ICT等の先端技術を活用して様々な地域課題の解決を図り、市民の利便性と生活の質の向上をめざす取組。

今と未来の住民が、ずっと住み続けられるまちを目指して。

ーー本日はよろしくお願いします。早速なのですが、久保様が所属されている泉北ニューデザイン推進室とは、そもそもどういった組織なのでしょうか?

泉北ニューデザイン推進室は、2021年4月に堺市長直轄の部署として設置されました。ほとんどの自治体では子育てなら子育て支援課、介護なら介護保険課のように、組織が縦割りになっているのですが、泉北ニューデザイン推進室では、泉北ニュータウンエリアの地域活性化と課題解決、都市魅力の向上といったまちづくり全般にまつわるものを専門に横串を通す部署として事業を推進しています。

また、泉北エリア≒堺市南区なのですが、南区の南区役所にも自治推進課などまちづくりに関する専門部署がありますが、それとは別に堺市役所として泉北ニューデザイン推進室を設置していることも、全国的には珍しい事例だと思いますね。

ーースマートシティ担当の久保様ご自身はどういった想いを持って取り組まれていますか?

よく「スマートシティがやりたいんやろ?」と聞かれるのですが、実はそれがやりたいわけではなくて。一番の目的は、子育て世代から高齢の方まで〈いま泉北に住んでいる方々〉の困っていることを解決し『泉北が最近ちょっと便利になったよね』『泉北では今までなかったことができるよね』と言われるような、ずっと住み続けられるようなまちを目指したいんです。そして〈これから引っ越しや移住を検討されている方々〉の選択肢としても、泉北が選ばれるまちを目指したい。そのためのスマートシティという形だと考えていますね。

地域の力を合わせて、スマートシティを共創する。

ーーSENBOKUスマートシティ構想として「暮らし愉しむ、アソビのあるまち」というコンセプトを掲げられていますが、これはどういった背景で策定されたのでしょうか?

これまで泉北ニュータウンはベッドタウンとして知られているように、平日も休日も日中の時間帯を泉北で過ごすことが少ない方も一定おられました。構想が策定されたのは2021年、まさに新型コロナウイルスと働き方改革の影響を受け、在宅ワークの普及で働く場所も選ばなくなったからこそ『泉北という身近な場所で、暮らしを愉しめるようになればいいな』と考えました。

泉北は公園も多く緑も豊かで、おしゃれな飲食店や雑貨屋さんがあったり、1日中遊べる体験型農業公園のハーベストの丘や、鉢ヶ峯のようにホタルが見れる場所もある。もっと便利に快適に、スマートに過ごしながら泉北を楽しんでもらいたいという想いから「Live SMART Play SENBOKU~暮らし愉しむ、アソビのあるまち~」がコンセプトとなりました。

ただ、こうした構想は行政単独で進めるにも難しいことですから、民間企業や大学など皆さんのお力を借していただくべく、2022年にSENBOKUスマートシティコンソーシアムを設立しました。このコンソーシアムは今年で3年目を迎えるのですが、現在では150を超える民間企業や大学、大阪府、地元の南区自治連合協議会の皆さんにも入っていただき、私自身は特に「ヘルスケア分野」「モビリティ分野」に注力しています。

ーーまさに真の産官学連携のもと、取り組まれているのですね。2つの分野に注力されているとのことですが、具体的にはどういったことをされているのでしょうか?

まずヘルスケア分野については、南海電鉄さんが主体となって「へるすまーと泉北」という地域特化型のヘルスケアアプリを活用した実証事業を行っています。

これは歩数に応じてポイントが貯まり、そのポイントを使って電車に乗ったり、飲食店やスーパーでポイントを使えるアプリで、高齢者の方から働く若い世代まで幅広い世代で毎日使ってくださっています。ランキング機能があるので、上位を狙ってゲーム感覚で毎日1万歩以上歩かれている方もいますし、アクティブユーザー数はものすごく多いですね。

大阪公立大学さんと共同でユーザーデータ分析もしているのですが、行動変容にも繋がっているという裏付けもとれているんですよ。こういった学術的な面でも効果が見られているので、ヘルスケア分野の施策の目玉になっていますね。

次世代モビリティの力で毎日が便利に、暮らしが豊かに。

ーーモビリティ分野では「オンデマンドモビリティ」「シェアリングモビリティ」「サービスモビリティ」の3つの柱を設けているとのことですが、具体的にはどういった次世代モビリティを構想しているのか、お話を伺いたいです。

まず1つ目のオンデマンドモビリティについては、時刻表や決まったルートのない予約制乗り合いバス「オンデマンドバス」ですね。

これについては事業主体の南海電鉄さんと2年前から一緒に取り組んでいて、今年度も10月から第3弾の実証事業を予定しています。実用化に向けて改善を進めている状況ですが、住民の方々からの反応もとても良いですね。

というのも、アンケートで車を持っている方も含めて9割以上の方から「日頃の移動手段より便利だ」などの満足の声をいただいていて、8割以上の方から「オンデマンドバスがなくなったら困る」という回答結果だったんですよ。

ーーそこまで住民の方々からの反応が良かった理由は何だったのでしょうか?

前提として、実は泉北はもともと公共交通が充実しているんですよね。まちのど真ん中に駅があって、その電車に乗れば乗り換えなく20数分で難波まで出られますし、駅を起点とした路線バスもしっかり整備されて、関西空港への直通バスも出ていて、現時点でも十分利便性は良いんですよ。

それでも、自家用車がないと不便なエリアがあったり、日中はバスの運行が手薄な時間帯やエリアがあります。『それらを補完してもっと外出していただきたい』『自家用車を手放して公共交通をどんどん使ってもらえるような仕組みが作りたい』という想いから、生まれたものがオンデマンドバスだったので、実際に困っている住民の方々にサービスが届けられているのだと思います。

ーー住民の方々が求めていたサービスが実現されていたのですね。次に、シェアリングモビリティについてお伺いしたいです。

2つ目のシェアリングモビリティについては、代表的なものとしては、HELLO CYCLING (ハローサイクリング)という、電動アシスト自転車のシェアサイクリングサービスと連携し、西日本で初めて電動サイクルのシェアリング実証事業を開始しました。

通常こういったシェアリングモビリティは、都心や観光地などの日中人口が多いエリアにポートが作られることが多いため、泉北のような郊外住宅地で実施するのは割と珍しいかもしれません。特に電動サイクルはスタイリッシュで乗ること自体が楽しいような乗り物で、自己所有せずに使いたい時に使って、乗り捨てることができる。そんなサービスなのですが、実は高齢者の方々からの反響が大きかったんですよね。

というのも、免許返納された後でも乗れるような、免許不要の乗り物が欲しいという高齢者の方はとても多くて。電動アシスト自転車が欲しくても個人で買うには高価ですから、シェアリングできることは理想的な解決策だったんです。

このように、実証事業をやらなければ分からなかった使われ方やニーズが見えてきましたし、外出機会を創出することでフレイル(※3)が進みづらくなるといったところにも寄与できるのではないかと考えています。

※3 健康な状態と要介護状態の中間に位置し、身体的機能や認知機能の低下が見られる状態のことを指す、日本老年医学会が2014年に提唱した概念のこと。

ーーサービスモビリティという単語を初めて聞いたのですが、これはどういったものでしょうか?

3つ目のサービスモビリティについては、身近な場所で買い物や様々なサービスを気軽に便利に楽しむことができる環境を創出しようとしています。

前提として、泉北ニュータウンは住宅地として開発されたので、すぐに店舗として使えるような土地が少ないんです。そのため、買い物に行くにもバスに乗るか自転車や徒歩で、一定距離のある商業施設まで行かないといけないことが多々あります。

そこで、例えば免許返納などによって空き駐車場が出ている団地などで、住民のニーズに合わせて飲食店や物販、マッサージや服屋さんまで、ありとあらゆるサービスの方から近くに来てくれる、そんなサービスモビリティがあったら便利だということで、議論が進められています。

これらの次世代モビリティを通して、高齢者の方々にとっては免許を返納してもずっとここで住み続けられる、子育て世代にとっては便利だから住みたいと選ばれるようになるような、そんなまちをめざしていきたいですね。

ーー仕組みを作るだけでは終わらず、住民の方々が盛り上がっている様子に驚きました。こういった空気作りに関しては、何か工夫されていることはあるのでしょうか?

参画されている企業の方々のお力がとても大きいですから、私たちとしては堺市や南区の広報媒体で広く情報発信したり、住民の方々にご説明する場を用意したり、実証事業をする際には、警察や国との協議に同席するなど、様々なステークホルダーとのフォロー役として、行政ができることは何でもお手伝いしています。

あとは、もともと泉北は地域で自主的に集まって活動されている方々が多くて、NPOや市民団体、自治会活動などがすごく盛んなんですよ。趣味が合ったり気の合う方々で集まったり、誰でも自由に出入りしやすい場所があって、オフラインでも密に情報が行き渡りやすい。そういった地域性もマッチして、新しい取り組みに対して盛り上がる空気感が作れたのかもしれません。

心と暮らしにゆとりを与える。ひと味違った切り口で、移住にスマートな選択を。

ーーたしかに、地域としての結束力や盛り上げていこうというパワーを感じられました。今後、泉北では泉ケ丘駅前に近畿大学医学部・大学病院の新築移転を控えているとのことですが、SENBOKUスマートシティ構想としての展望は何かあるのでしょうか?

泉北ニュータウンでも、一番人が集まるのは代表的な泉ケ丘駅周辺になるのですが、今後は周辺駅含めてまちの様子がガラッと変わっていくと思います。

キャンパスや大学病院も誰もが往来できるようなオープンな空間となる予定ですし、そのあたりも整備されることによって、もっと住民が集まりたくなるような、時間を過ごしたくなるような場所になると思います。オンデマンドバスも駅前に停まるので、栂地区や光明池地区の住民の方々も移動しやすくなることで、関係人口もどんどん増えていくのではないかと考えていますね。

また、現在も近畿大学医学部の学生の方々とSENBOKUスマートシティコンソーシアムが連携し、フィールドワークを通して見出した地域課題に対して、学生視点で地域住民のヘルスケアやウェルビーイング向上に向けた解決策を提案する『カレッジラボ』という取り組みを毎年実施していて、これも将来的には実証事業までできることを期待しています。

ーー現時点でも近畿大学医学部の学生を巻き込んで、フレッシュな視点からウェルビーイングを検討できていることも良い試みですね。

前述の通り、モビリティやヘルスケアなどは注力分野ではあるのですが、それ以外にも暮らしにまつわるものは防犯や自動配送など分野も多岐に渡ります。

南海電鉄さんがリーダー企業として旗振りいただいている「スマートタウンワーキング」では、そういった一つ一つをスマートシティの要素としてまちの再開発・再整備に対して落とし込めないか、検討いただいています。こういった取り組みも、一緒に連携したいと考えています。

そして近畿大学医学部の移転に伴って、学生の方々が泉北に住んでくださったり、医療分野の事業者を泉北に誘致できたり、大学にもオンデマンドバスで繋ぐことができると、より身近に医療を受けることができるようになったら理想的だと思っています。

ーーすでに泉北に移住された方のコメントで「泉北はいろんなことを選べる場所だと思う。住み方も働き方も、教育も選択できる余白がある。」というものを拝見しました。実際にそうした余白に魅力を感じる子育て世代がいらっしゃる中で、移住を検討されている方々にお伝えしたい泉北のゆとり・余白の魅力があればお聞きしたいです。

例えば、今まで路線バスと電車を乗り継いで移動に時間がかかっていたとして、この移動手段がオンデマンドバスやシェアリングモビリティで少し便利になることで、時間にも余裕ができるかもしれませんよね。リモートワークをはじめとする働きやすい住環境も通勤時間を余白に変えてくれるものですし、そうして生まれた時間を子育てや趣味に充てていただいたり、スマートシティの取り組みによって生み出すことのできる余白、ゆとりの価値だと思います。

スマートシティ以外の部分でもゆとりに関連していえば、一人当たりの公園面積が全国平均の2倍で大阪府下ではトップクラスですし、泉北の子ども園や幼稚園は園庭もとても広いんですよ。別のエリアからわざわざ選んでくる方もいらっしゃるくらい、子どもを自由にのびのび育てられるような環境もあります。少し車を走らせれば農村の風景や棚田が広がっていたり、朝どれの産直市場が近くにあったり。そういった環境的なゆとり、余白もあるのではないかと思いますね。

移住に関しては様々な地域と悩まれるかと思うのですが、泉北ではスマートシティというひと味違った切り口で、移動や日々の生活を便利にしたり、ヘルスケアの観点では健康で暮らしを楽しめるような取り組みをしています。これからもっと便利になっていきますし、住環境も含めたスマートな選択として、泉北を選んでいただけたら嬉しいですね。

インタビューを終えて

リモートワークの普及とともに働き方が多様化するなかで、ライフイベントに合わせた地方移住や住み替えを考えやすい時代になりました。そんな時代の変化に合わせて、スマートシティとして進化していく泉北の挑戦は、お話を聞いていて心がワクワクするものばかり。

「泉北には、本当に心が豊かな方々が多いんです。」

そう語る久保様の目には、まるでひとりひとりの住民の顔が浮かんでいるようで、今の住民も、未来の住民も、ずっと住み続けられるまちを実現させたいという想いが伝わってきました。

行政も住民も、企業も大学も。泉北の未来を本気で考える人たちが、たくさんいるこのまちには、家族みんなが笑顔になるような暮らしが待っているはずです。
もし泉北に興味があれば、まずは観光気分で足を運んでみてはいかがでしょうか。

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