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〝山あいの集落で、小学校から中学校までの義務教育がすべて歩いて完結する〟
そんな全国でも珍しい環境があるのが、和歌山県高野町の小さな集落、「富貴(ふき)」です。
高野町と聞くと、多くの人がまず思い浮かべるのは世界遺産「高野山」かもしれません。しかし、同じ町内の少し離れた山間、人々の暮らしが静かに息づく富貴という場所があります。

富貴が近年、移住を検討する人たちから注目を集めている理由のひとつが、2026年春に中学校が開校し、義務教育がすべて徒歩圏内で完結するようになること。さらに移動スーパーや診療所といった日常を支える仕組みも整い、車で20〜30分ほど走れば、橋本市の大型スーパーやホームセンターにもアクセスできます。
山あいなのに暮らしやすい。その理由を、わたしたち自身の目で確かめたくなりました。

こんにちは、南海電鉄地域発見クリエイターズ課のねこです。
今回はクリエイター仲間のマコさんと共に富貴を訪れ、その魅力に触れてきました。
富貴に入ってすぐ、最初に出会ったのはにこやかな笑顔の町民の方。
「みかんいる?」と声をかけてくださり、ご自宅で採れたみかんを手渡してくださいました。その気さくなやりとりに、富貴の人柄や土地の温度がふわりと伝わってきました。
【ねこ(執筆者)の注目POINT】
— 道端の何気ないやりとりが、この土地で息づく〝やさしい暮らし〟を物語っていました。

山あいの集落・富貴では、子どもたちの学びが暮らしのすぐそばにあります。通学のために長い距離を移動する必要はなく、学校は日常の延長線上にある存在です。
そんな富貴の教育環境を知るために訪れたのは、高野町立富貴小学校。
山に抱かれるように佇む校舎は、教室の窓から四季折々の景色が広がり、子どもたちの笑い声が風に混じって心地よく響きます。

都会ではなかなか味わえない、自然の中で学ぶ贅沢がここにはありました。
富貴には保育園こそありませんが、その代わりに「ちっちらこ」という子育て支援の一時預かりサービスがあります。ちっちらこでは、きのこや山菜を探したり、里山を散歩して植物や昆虫に出会ったり、畑で野菜を育てて収穫したり‥‥
子どもたちが季節とともに五感をめいっぱい使って遊び学べる環境が整っています。

そして2026年4月には、富貴に中学校が開校します。
これまでは、小学校を卒業すると車で50分かかる中学校へ通う必要がありましたが、春からは小学校と同じく、子どもたちが歩いて通える距離で義務教育を受けられるようになります。少人数ならではのきめ細かい教育と、山あいの豊かな自然に包まれた学びの環境。
これは全国でも本当に稀な、恵まれた環境なのではないのでしょうか。
【ねこの注目POINT】
—〝義務教育を歩いて通える〟という安心感は、移住を考える家族にとって大きな追い風になりそうです。
山あいの集落でありながら、富貴では「暮らし」がきちんと息づいています。
それを確かめるために、私たちは実際にまちを歩いてみることにしました。
そこで出会ったのは、のんびりと草をはむ2頭の羊。

3月で2歳になる双子の羊たちの名前は「あんこちゃん」と「ずんだちゃん」。ふわふわの毛並みと優しい目つきがなんとも可愛らしく、都会では出会えないゆるやかな風景に、思わずこちらまでほほえんでしまいます。
続いて訪れたのは、富貴に移住して古民家を改装しながら暮らすご夫妻のお宅。

築年数を重ねた家屋に手を加え、梁や壁の質感を活かした空間となっており、日々の暮らしが息づく、あたたかな住まいでした。台所の窓から見える季節の景色が、暮らしそのものに溶け込んでいるようで、富貴の日常の豊かさを感じます。

そして最後に向かったのは、富貴へ家族とともに移住し、現在は地域おこし協力隊※として活動している足立義剛さんのご自宅。家の前では5羽のニワトリが元気に歩き回っていて、子どもたちと一緒に小屋を作ったというお話を聞くと、自然とともに育つ日々が目に浮かびました。
※地域おこし協力隊:
地域おこし協力隊は、都市部から過疎地などへ住所と生活拠点を移し、伝統産業の継承、地場産品の開発協力、地域振興の推進、地域協力活動などを行いながら、その地域への定着・定住を目指す制度。

さらに敷地内には手作りのピザ窯まで!
そして現在は、集いの場となるようにと納屋を改装しDJブースを製作中とのこと。

「みんなでわいわいできる場所を作りたいんですよ」とにこやかに笑う足立さんの言葉や表情から、富貴での暮らしを心から楽しみ、周りの人とも共有したいという想いが伝わってきました。
【ねこの注目POINT】
— 自分たちらしい暮らしを、ゆっくり編んでいける場所。それが富貴なのかもしれません。
訪れるだけでは見えない日常があります。
「この土地で〝暮らす〟というのは、実際どんなものなんだろう?」
冬の厳しさ、医療や買い物のこと、子育ての環境、地域とのつながり。
そんな疑問を解き明かすべく、この富貴を暮らしの場所として選び、家族とともに日々を営んでいる足立さんに話を伺いました。実際に住んでいるからこそ分かること、この土地で子どもを育てる理由、そして富貴の魅力とリアル。ここからは、足立さんの言葉とともに、富貴の暮らしに少し踏み込んでいきます。

Q1. 移住を考えるようになったきっかけを教えてください。
A. 娘が「化学物質過敏症」を発症し、学校へ行けなくなったことがきっかけです。
奈良の市街地から、自然豊かな田舎への移住を考え始めました。
Q2. 実際に暮らしてみて、想像と違ったことはありますか?
A. 冬の時期の想像以上の寒さですね。これまで体験したことのない寒さです。
その反面、夏はとても涼しくて過ごしやすく、まるで天国のようです。
Q3. 富貴で暮らす中で、特に好きな季節や瞬間は?
A. 一番は夏ですね。
子どもたちが川で遊んだり、釣りをしたり、自由に駆け回ったりする姿を見ると、本当に気持ちがよいです。
都会のように暑くて部屋にこもる生活とは違って、自然と一体になって遊ぶ子どもたちを見ると幸せを感じます。
冬は冬で、子どもが雪を楽しみにしていて四季すべてによさがあります。


Q4. 富貴の食の魅力はどんなところでしょうか?
A. とにかく野菜が美味しいです。
夏野菜は特に味が濃く、寒暖差のおかげで甘くて色も鮮やか。
地元の方は畑を長年やっている人が多くて、立派な野菜をたくさんいただくので、自分で作らなくても十分なくらいなんです。

Q5. 移住する際、不安はありましたか? そして住んでみて変化はありましたか?
A. 大阪に通勤していたので、都会の普通の働き方から離れることに不安はありました。
変化は、家族と過ごす時間が圧倒的に増えたことです。
これが何より良かった点で「自分が本当にしたかった暮らしはこれだ」と実感しています。
Q6. 暮らしの中で感じる〝地域のあたたかさ〟を教えてください。
A. 普段の挨拶や会話はもちろんですが、何かあった時の団結力がすごいです。
例えば、車が溝にはまって困った時に連絡をすると、すぐに人が集まって助けに来てくれる。
困ったら支え合い、お祝い事があれば一緒に喜ぶ。
まるで大きな家族のようなつながりがあります。
Q7. 医療や買い物などの日常生活の利便性はいかがですか?
A. 軽い病気なら診療所があるので安心です。
郵便局も歩いて行ける距離にあります。
買い物も、コンビニやスーパーの移動販売が来てくれるので困りません。
富貴内にも「岡益商店」という商店があります。
Q8. 移住希望者へ、富貴と合う人のタイプを教えてください。
A. 人が好きな人、自然が好きな人には最高の場所です。
都会で息苦しさを感じている人は、一度訪れてみてほしいです。
子育て世帯にも非常におすすめで、年配の方との交流が自然と生まれ、子どもが学べることも多いです。
少人数だからこそ学年を超えて遊び、思いやりや創造力が育ちます。
Q9. 来年、中学校が開校すると伺いました。
A. はい。これまでは中学校まで距離がありましたが、来年から義務教育を歩いて通える範囲で完結できます。
全国でも珍しい、少人数での充実した学校環境が整うので、とても楽しみにしています。
インタビューの最後に、足立さんから移住を迷っている方へメッセージをいただきました。

まずは気軽に来ていただければと思います。
決して大きな決断として構えすぎる必要はありません。
周りから野菜をいただくなど助け合いの文化もあり、生活の土台がしっかりしているため、意外とリスクは少ないと感じています。深く考えすぎず、一度訪れてから判断してみてください。
冬の寒さや少しの不便さなど、向き合うことはあります。それでも、この土地で生きたいと思わせてくれる魅力が、富貴には確かにありました。もし今の暮らしにちょっと疲れたと感じたら、ふらりと富貴を訪れてみるのもいいかもしれません。
もしここで「ほっとできる自分」に出会えたなら、それはきっとなによりの収穫です。自然に寄り添い、人のあたたかさに触れながら心がゆるむ暮らし。富貴は今日も、変わらないやさしさで迎えてくれます。

富貴の暮らしやすさのポイント
富貴はこんな方に向いています
移住相談窓口
高野町 観光振興課
〒648-0211
和歌山県伊都郡高野町高野山357(高野山観光情報センター内)
高野町では、移住に関するご相談を随時受け付けています。
また、和歌山県と連携した移住相談会も定期的に開催していますので、富貴の暮らしに興味のある方はお気軽にご参加ください。

執筆者:ねこ
撮影者:マコ、You、ねこ
写真提供:足立義剛
よく利用している泉北高速鉄道が南海電鉄と合併するということで、地域発見クリエイターズ課に参加させていただくご縁をいただきました。緑が多く心地よい街である泉北の魅力やイベント情報をお伝え出来たらと思います♪
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